「自分だけのキャンピングカーで、自由に旅をしてみたい」
「でも、市販のキャンピングカーは高額でなかなか手が出せない…」
このように感じている方にとって、軽バンをベースにした「自作キャンピングカー」は有力な選択肢の一つです。DIYであれば、コストを抑えながら、自分の使い方に合った一台を作ることが可能です。
この記事では、軽バンを自作でキャンピングカーにするためのメリット、具体的な作り方の手順、必要な費用、そして特に重要な車検や安全性の注意点まで、順を追って解説していきます。
軽バンを自作でキャンピングカー化するメリット

まず、なぜ軽バンを自作でキャンピングカーにする方法が選ばれているのか、その主なメリットを3つのポイントで整理します。
市販よりも費用を大幅に抑えられる
自作を選ぶ最大の理由は、やはりコストを抑えられる点です。現在、新車の軽キャンピングカーは200万円台から400万円台が中心価格帯です。
これに対して自作であれば、ベースとなる中古の軽バンを数十万円で購入し、内装の製作費用を工夫次第で数万円からに抑えることもできるため、総額を大きく圧縮できます。
浮いた予算を旅の資金や他の道具に充てられるのは、大きな利点と言えるでしょう。
軽自動車なので維持費が安く経済的
キャンピングカーは購入後の維持費も考慮に入れる必要があります。その点、軽自動車がベースであれば、普通車と比べて毎年の自動車税や車検時の重量税、高速道路料金などが安く済みます。
また、燃費が良い車種を選べば、長距離を移動する際のガソリン代も節約できるのも嬉しいポイント。この経済的な負担の軽さは、セカンドカーとして所有するにもピッタリです。
必要な装備だけを選んで自由にカスタマイズできる
市販のキャンピングカーは多くの人に対応できるよう、様々な装備が付いています。しかし、使う人によっては不要な装備もあるのが実際の所。
DIYであれば、本当に自分が必要なものだけを選んで設置できます。特にスペースの限られる軽バンでは、自分の使い方に合わせて棚の高さや幅を1cm単位で調整できる自由度の高さが、快適な空間づくりに直結します。
軽バンキャンピングカーの自作方法!作り方4ステップ

思いつきで作業を始めると、後から修正が難しくなってしまいます。まずは計画を立てることから始めましょう。ここでは、4つのステップで手順を解説します。
最初に「この車で何をするか」を具体的に考えます。「一人で釣りに行くのがメイン」「夫婦二人でキャンプに使いたい」「登山の前泊用」など、主な用途によって必要な設備やレイアウトは変わってきます。
この目的がはっきりしていると、後の工程で迷いが少なくなります。
ステップ1で考えた用途に基づき、必要な装備をリストアップします。
例えば、「快適に眠れる平らなベッド」「調理道具をしまう収納棚」「食事をするためのテーブル」といったように、まずは必須のものを書き出します。次に「あったら便利なもの」も加えていくと、全体の設計が見えてきます。
設計がある程度固まったら、必要なものを購入します。
全て自分で作りたい場合はホームセンターで木材や金物を、手軽に始めたい場合は車種専用に設計された「自作キット」を選ぶのも良い方法です。
必要な工具(インパクトドライバー、のこぎり、メジャーなど)もこの段階で確認し、揃えておきましょう。
材料と道具が揃ったら、車内への取り付け作業に入ります。
焦らず、安全に注意しながら一つずつ形にしていきましょう。DIYでは、寸法が合わなかったり、予定通りに進まなかったりすることもありますが、工夫して解決していく過程も楽しみの一つです。
キャンピングカーの自作方法については以下の記事で詳しく解説していますので、合わせて参考にしてください。

軽バンをキャンピングカー化するなら自作キットもおすすめ

「DIYに興味はあるけれど、設計や木材のカットに自信がない」という方には、市販の「自作キット」が便利です。
これらのキットは、スズキ・エブリイやダイハツ・ハイゼットカーゴといった人気車種に合わせて作られており、家具を組み立てる要領で、比較的簡単に質の高い内装を組むことができます。
採寸や複雑なカット作業が不要なため、DIYの経験が少ない方や、作業時間を短縮したい方には向いているでしょう。費用は素材を個別に買うより高くなりますが、その分の価値は十分にあると言えます。
【初級編】自作で軽バンをキャンピングカー化する時のポイント3選

まずはここから。比較的取り組みやすく、車中泊の快適さを大きく向上させる基本的なポイントを紹介します。
寝床の広さと快適性を確保する

車内で快適に過ごす上で、最も重要なのが平らで広い「寝床」です。
多くの軽バンは後部座席を倒すだけでは完全なフラットにならず、段差が残ります。この段差を解消するために、コンパネなどで床を水平にする「床上げ」を行うのが一般的です。
平らな床の上にマットなどを敷くことで、格段に寝心地が良くなります。
縦の空間を活かして収納を工夫する

軽バンの限られたスペースでは、収納の工夫が快適性を左右します。
特にデッドスペースになりがちな「縦の空間」を有効活用しましょう。天井近くのアシストグリップ間に突っ張り棒を渡したり、ネットを張ったりするだけで、衣類やブランケットなど軽量なものを置くスペースが生まれます。
側面の壁に有孔ボードを取り付け、小物を掛けて収納するのも良い方法です。
調理スタイルに合わせてキッチンを設計する

車内で調理ができると便利ですが、本格的なキッチン設備を自作するのは大変です。まずは自分の使い方に合わせて考えましょう。
「調理は主に外で済ませる」と割り切り、車内にはカセットコンロや調理器具を収納するスペースだけを確保するのも一つの手です。
簡単な湯沸かしや調理がしたい場合は、小さなテーブルとポータブル電源を組み合わせるだけでも、簡易的なキッチンスペースとして機能します。
【中級編】自作で軽バンをキャンピングカー化する時のポイント3選

基本的なカスタムに慣れてきたら、さらに快適な空間を目指してみましょう。
板張りや照明で車内をおしゃれに演出する

車の内装にある鉄板やプラスチックの内張りを、木材で覆う「板張り」は人気のカスタムです。
ホームセンターで手に入る薄いベニヤ板など塗装して壁や天井に張るだけで、車内の雰囲気が温かみのあるものに変わります。さらに、LEDテープライトなどで間接照明を追加すれば、夜間も過ごしやすくなります。
悪路対応カスタムでアウトドア感を高める

外装に手を加えるのもDIYの楽しみ方です。
少し大きめのブロックパターンを持つオールテレーンタイヤに交換すると、見た目の印象が変わり、アウトドアでの使用に適した雰囲気になります。
車高を少し上げる「リフトアップ」も、未舗装路での走行性を高めるのに役立ちます。ただし、足回りのカスタムは安全性に直結するため、専門のショップに相談することをおすすめします。
キャンプに出かける時は暗い夜道を走る事もあります。そういった場合はHID屋の明るいヘッドライトやフォグランプに変更するなど、安全面に配慮したカスタムも検討してみましょう。
サブバッテリーを追加して家電を使えるようにする

エンジンを止めた状態で電気製品を使えるようにする「サブバッテリーシステム」は、車中泊の快適さを大きく向上させます。
しかし、電気系統のDIYは専門知識が必要で危険も伴うため、自信がない場合は安易に手を出さず、専門業者に依頼するのが賢明です。まずは工事不要で手軽に使える大容量の「ポータブル電源」から試してみるのが良いでしょう。
軽バンを自作でキャンピングカーにするにはいくらかかる?

費用は、どこまで手を入れるかによって大きく異なります。
本格的にこだわると数十万円以上かかる
快適性を高めるための装備を充実させると、費用もそれなりにかかります。
例えば、冬の車中泊で役立つFFヒーターの導入には15万円〜25万円、大容量のサブバッテリーシステムを組むと数万円〜20万円ほどが目安です。
断熱材の施工や質の良い木材での家具製作まで含めると、DIYの費用だけで30万円〜50万円以上になることもあります。
工夫すれば低予算でも始められる
一方で、いきなり高額な費用をかける必要はありません。
自宅にある布団やキャンプ道具を活用し、数千円の木材で簡単なベッドを作る程度であれば、1万円〜3万円程度の予算で始めることも可能です。
まずは最低限の装備で実際に使ってみて、自分にとって本当に必要なものを見極めながら少しずつ追加していくのが、失敗の少ない進め方です。
【重要】自作で軽バンをキャンピングカーにする際の注意点と車検の条件

DIYを楽しむ上で、安全性と法律の遵守は最も重要なことです。以下の点は必ず守ってください。
保安基準を満たしているか
DIYで作った設備は、法律上「貨物車(4ナンバー)の荷室に積んだ荷物」として扱われるのが基本です。運転の視界を妨げたり、ライト類が隠れたりするような改造はできません。
また、許可なく座席を取り外して乗車定員を変えることも違法です。必ず元の乗車定員を守って作業してください。
走行中に脱落しないかどうか
走行中の車内は常に細かな振動にさらされています。そのため、自作した棚やベッドは、車体にしっかりと固定する必要があります。
固定には、振動で緩みにくい「セルフロックナット」機能のついたボルトとナットを使うのが確実です。一般的な両面テープや接着剤は、夏の高温で剥がれる危険性があるため、構造物の固定には使わない様にしましょう。
いざという時に外せるかどうか
車検の際に設備の確認を求められたり、将来車を乗り換えたりすることを考えると、作った設備を「取り外して元の状態に戻せる」ように作っておくことが非常に重要です。
【まとめ】軽バンの自作キャンピングカーは時間はかかるがコスパは最高
車体に穴を開けたり溶接したりするような、元に戻せない改造は避けましょう。この「原状復帰できる」という点が、トラブルなくDIYを楽しむためのポイントになります。
軽バンの自作キャンピングカーは、完成車を買うのに比べて手間も時間もかかります。しかし、その分コストを抑えられ、自分の手で使いやすい空間を作り上げていくという満足感を得られます。
試行錯誤を重ねながら少しずつ手を加え、旅をしながら育てていく。そんなプロセスも、自作ならではの魅力と言えるでしょう。
まずは簡単な寝床作りから、自分だけの一台作りを始めてみてはいかがでしょうか。

