車検対応ヘッドライトを選んで装着しても、残念ながら車検に通らない場合があります。
「車検対応商品を買ったのに!」「ヘッドライトは明るくなったのになぜ不合格に!?」とお悩みの方に向けて、不合格となった項目別に考えられる原因と、その対策をご紹介していきます。
再検査や次回の車検時に不合格にならないためにも、参考にしてみてください。
「車検対応」のヘッドライトなのになぜ不合格になるのか

「車検対応」と記載がある社外品は、車検基準を満たした設計になっています。しかし、車両側の状態によっては、車検に通らないケースもあります。
ヘッドライトをはじめ、車検は国土交通省の保安基準に基づき行われ、少しでも基準から外れていると合格できません。
実際、純正のヘッドライトを装備していても、経年劣化や調整不足などにより不合格になることがあります。
そのため、アフターパーツ本体の性能には問題がなくても、車両側の状態によっては「車検対応のヘッドライトでも不合格」となってしまうのです。
では、どのような「車両の状態」だと車検に落ちてしまうのでしょうか。車検対応のヘッドライトでも不合格になってしまう原因を以降で詳しく解説していきます。
車検に通らない原因①光量不足

車検でヘッドライトを検査する際に見られる項目の一つが「光量」です。
ヘッドライトは車両前方を照らし、暗闇でも安全に運転するための保安部品であるため、光量の検査は欠かせません。
そのため光量が車検基準に満たない場合、不合格になってしまいます。
車検に合格するには1灯あたり6,400cd(カンデラ)以上の明るさが必要です。
車検対応ヘッドライトであれば車検基準を満たした光量になっていますが、「車検対応品」にも関わらず光量が不足していると判定された場合、以下の理由が考えられます。
- 黄ばみでレンズが曇っている
- プロジェクターヘッドライトのレンズが白濁化している
- ヘッドライトバルブが劣化している
- リフレクターが劣化している
- バッテリーが劣化している
- 後付けパーツで光を遮っている
ここからは各原因の詳細と対策を解説していきます。
黄ばみでレンズが曇っている
光量不足の原因として、黄ばみによりヘッドライトのレンズが曇っていることが考えられます。

古い車のヘッドライトはガラス製でしたが、近年の車は樹脂素材で作られているのが一般的です。
樹脂素材は紫外線に弱いため、長時間太陽光にさらされると黄ばんでしまいます。
またハロゲンやHIDなど熱を放つヘッドライトバルブを装着している場合、バルブの熱によって黄ばみが進行しやすくなります。
もちろん黄ばみ対策としてレンズにはコーティングが施されていますが、経年劣化や飛び石などによりコーティングが剥がれてしまいます。
この黄ばみによってレンズの表面がすりガラスのようになり、バルブから放たれた光が遮られ、車検対応製品でも光量不足と判断されてしまうのです。
対策として専用のクリーナーや紙やすりなどにより、黄ばんだレンズの表面を削り、クリアにする方法があります。
もちろん新品のパーツに交換する方法もありますが、部品代や工賃により高価になってしまうため、まずはクリーナー等で黄ばみを落としてみてはいかがでしょうか。

プロジェクターヘッドライトのレンズが白濁化している
プロジェクターヘッドライトの場合、内部レンズの白濁化によって光量不足と判断される場合があります。

プロジェクターヘッドライトは内部にレンズが取り付けられており、バルブから放たれた光がレンズに集められて放射されるため、エネルギー効率が高いのが特徴です。
バルブとレンズの隙間からホコリが入り込んだり、周辺部品に塗られているグリスがレンズに付着したりすることでレンズ内部に汚れが蓄積され、レンズが白濁化する場合があります。
レンズの白濁化は焦点の正確性に大きく影響し、ヘッドライトの明るさを著しく低下させるため、車検時に光量不足と判断される恐れがあります。
白濁化を解決するために一番手軽な方法は、レンズの清掃です。
ヘッドライトバルブを取り外し、ウエスなどを差し込んでレンズの内側を拭き取ってみてください。
ただし、車種によってレンズの清掃が簡単に行えない場合があるので、注意が必要です。
清掃によって白濁化が直らない場合は、ヘッドライトユニットやレンズを交換する方法も選択肢として挙げられます。
愛車のヘッドライトがプロジェクター式で光量不足と判断された場合、一度ヘッドライト内部のレンズが白濁化していないか確認してみましょう。

ヘッドライトバルブが劣化している
ヘッドライトバルブの劣化によって購入時の明るさが出ないことも、原因として考えられます。
ヘッドライトバルブがハロゲンやHIDの場合、光源となるフィラメントは熱に弱い特徴があります。
ライト点灯時、フィラメントに電流が流れると電気抵抗により熱が発生し、その熱により劣化が進み性能が低下してしまうのです。
またLEDバルブも熱に弱いことから、バルブ内部で発生する熱により少しずつ周辺部品が劣化し、性能が低下していきます。
そのため長期間同じヘッドライトバルブを使用している車両で光量不足と判断された場合は、バルブの劣化の可能性が考えられます。
対策としては、新しいヘッドライトバルブに交換するのが良いでしょう。
リフレクターが劣化している
光量不足と判定されたのは、ヘッドライト内部のリフレクターが劣化していることが原因かもしれません。

ヘッドライトの形式の一つに、お椀状のリフレクター(反射板)を利用してバルブから発せられた光を前方に広げる「リフレクタータイプ」があります。
このタイプの要となるリフレクターはメッキ加工がほどこされており、より効率的に光を反射できるようになっています。
しかしリフレクターは経年劣化やバルブから発せられる熱などにより、メッキ加工が劣化していきます。

(参考:国土交通省)
一度メッキ加工が劣化してしまうと、車検対応のヘッドライトバルブを装着していてもリフレクター内で反射が上手く行われません。
そうなると必要な光が前方に照射されず、光量不足と判断されてしまいます。
この対策として、リフレクターの交換をおすすめします。
リフレクターを交換することで、計算された反射が可能になります。
なおリフレクターの劣化にはメッキの再塗布も対策として挙げられますが、こちらの方法は定期的なメンテナンスが必要となるため、予算やオーナーの状況に応じて対策を選ぶことをおすすめします。
バッテリーが劣化している
バッテリーの劣化によって、ヘッドライトバルブの性能が充分に発揮されず、光量不足と判断される場合があります。
ヘッドライトをはじめ自動車の電装品はバッテリーによって稼働していますが、バッテリーは使用するうちに劣化していき、徐々に電圧が低下していきます。
電圧が低下すると、充分な電気を送ることができなくなり、ヘッドライトバルブは性能通りの明るさを保つことができません。その結果、光量不足と判断されてしまいます。
バッテリーの劣化が疑われた場合は、新しいバッテリーに交換してみましょう。
交換することで電圧が回復し、ヘッドライトバルブの性能を引き出せるようになります。
後付けパーツで光を遮っている
ヘッドライトのスモーク化などを目的としてヘッドライトカバーやフィルムを装着することで、ヘッドライトの光が遮られ、光量不足と判定される場合があります。

もしスモーク化などで後付けパーツをヘッドライトに取り付けている場合は、取り外して検査を受け直してみましょう。
余分なパーツを取り外すことで、車検に適した光量や色に戻り、車検に合格するかもしれません。
車検に通らない原因②光量過多
車検ではヘッドライトの光が強すぎる(光量過多)場合でも、車検に不合格になる場合があります。

純正でハロゲンバルブを使用するリフレクタータイプヘッドライトで、バルブを社外LEDに交換した際に光量過多となるケースが多いです。
LEDが放つ光が明るすぎることでリフレクターで余計な反射が行われてしまい、カットラインがぼやけたり、グレアが発生します。
光量過多の対策として、バルブの角度調整が可能な商品の場合、角度を調整をすることで改善や光量の軽減が期待できます。
■カットラインとは
ヘッドライトの光が当たる箇所と当たらない箇所の境界線
■グレアとは
カットラインから光が漏れ出ること
車検に通らない原因③ヘッドライトの色が車検基準でない
光量に問題がなくても、ヘッドライトの光が車検基準に適した色でなければ不合格となってしまいます。
国の車検基準によってヘッドライトの色は白色と定められており、それ以外の色であると判断された場合は車検に通りません。(2005年以前製造車は淡黄色も可)

光量と違い、ヘッドライトの色には明確な数値は定められておらず、検査官の目視によって判断されます。
そのため6,500K(ケルビン)の車検対応バルブでも、フィルムなどドレスアップパーツにより色味が白以外になってしまえば不合格になってしまうことも。
またバラストの劣化や車両側からの電力供給の変化によって、色味が変わってしまい車検不適合となる場合もあります。
このような問題に対しては余分なヘッドライトパーツを取り外したり、バラストなど電装部品を交換することで、車検に適した色に戻すことができるでしょう。
車検に通らない原因④カットラインが不明瞭、エルボー点がズレている
カットラインが不明瞭だったり、エルボー点がズレている場合でも車検では不合格になることも。
カットラインはヘッドライトの光が当たる箇所と当たらない箇所の境界線を指し、エルボー点はカットラインが折れ曲がる箇所を指します。

このカットラインとエルボー点が車検基準を満たすことによって対向車が眩しくならずに、歩行者や自転車などを明るく照らすことが可能になります。
このカットラインやエルボー点を理由に車検に不合格となる場合の原因として、以下の2つが考えられます。
- 光軸が乱れている
- 相性が悪いバルブを装着している
詳しく解説していきます。
光軸が乱れている
ヘッドライトバルブの交換や走行時の振動により、光軸がずれてカットラインやエルボー点が乱れることがあります。
■光軸とは
ヘッドライトが照らす光の方向のこと
筆者自身、ヘッドライトバルブを交換していないにも関わらず、光軸がずれて車検に不合格になったことがありました。
その時は急いで検査場周辺の整備工場を探して飛び込みで光軸調整を依頼し、なんとか再検査で合格した記憶があります。

このようなことからヘッドライトの光軸は非常にシビアなものと言えるため、車検前には予め光軸を確認し、必要に応じて調整を行うことが重要です。

相性が悪いバルブを装着している
ヘッドライトと相性が悪いバルブを装着することで、設計されたとおり光が照射されず、配光が乱れて車検に不合格となってしまう場合があります。
リフレクターヘッドライトの場合はバルブから放たれる光の反射を、プロジェクターヘッドライトの場合はバルブから放たれる光とレンズとの焦点を綿密に計算し、設計されています。
そのため、ヘッドライトバルブを交換したことで計算と異なる発光となった場合、エルボー点やカットラインが乱れた状態で光が照射されてしまいます。

(参考:国土交通省)
対策としては純正形状を再現したヘッドライトバルブに交換することで、設計通りの照射に繋がることが期待できます。
車検に通らない原因⑤その他の理由
光量や配光が問題ないにも関わらず、その他の理由でヘッドライトが不合格となる場合があります。
例えばレンズなどヘッドライトユニットが破損していても車検は通過できません。
レンズ表面に小キズがある程度は問題ありませんが、1mm〜2mmといった小さな破損でも、光が外へ漏れた状態は不合格となってしまいます。
またユニット自体に問題がなくても、周辺のボディが凹んでいるなどの理由で、ヘッドライトがガタついている場合でも車検には通りません。
この場合の対策としては、ヘッドライトユニットや不合格となった原因の部品を交換するのが一番です。
まとめ
ここまで車検対応ヘッドライトバルブを装着しても車検に不合格となる原因と対策を、項目別に紹介してきました。
車検対応製品を取り付けていても、車両側の状態により車検で不合格と判断されることがあります。
「車検対応ヘッドライトだから問題ない」とは必ずしも言えないため、車検前には今回紹介した内容を確認していただくと安心です。
なお、車検に一度不合格になってしまっても同日であれば、あと2回、追加料金不要で再検査が可能です。本記事を参考に、対策を施したうえで再度受験してみてください。